ジョブカードとは/書き方やメリットを徹底解説

近頃、採用の場面などでよく耳にするようになってきた『ジョブ・カード』。今回はそんなジョブ・カードと履歴書や職務経歴書との違い、作成することによるメリット、どのような物があるのか等を詳しく解説していきたいと思います。

ジョブ・カードとは

ジョブ・カードは、厚生労働省の『ジョブ・カード制度』に基づいて、求職者、在職者、学生など幅広い方を対象に、求職活動、職業能力開発など様々な場面において、自身の職業経験や取得した資格、受けてきた職業訓練など、これまでのキャリアを整理することができる書類のことをいいます。

厚生労働省のサイトではジョブカード制度の趣旨について詳しく説明しています。

個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職等を促進することを目的として、ジョブ・カードを「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」のツールとして、キャリアコンサルティング等の個人への相談支援のもと、求職活動、職業能力開発などの各場面において活用する制度です。

ジョブ・カード制度
ジョブ・カード制度について紹介しています。

『キャリアを整理できる書類』という点では、履歴書や職務経歴書などの応募書類と似ていますが、これまでの職業経験を通じて自分にどのような『強み』や『弱み』、『興味・関心』があるのか等、細かく自己分析できるツールとなっている点が大きな特徴と言えます。

これまで作成・保存は『紙』か『電子媒体』に限られていたジョブ・カードですが、2022年10月以降はウェブサイト「マイジョブ・カード」で作成・更新・保存ができるようになりました。

ハローワークインターネットサービスに登録した求職情報を活用したジョブ・カードの作成や、job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))との連携による職業情報やキャリア形成に役立つ情報の取得もできるようになり、ますます利便性が高まっています。

①生涯を通じたキャリア・プランニングのツールとして

キャリアコンサルティングの支援の前提となる個人の履歴や、支援を通じた職業経験の棚卸し、職業生活設計等の情報を蓄積し、訓練の受講、キャリア選択等の生涯のキャリア形成の場面において活用する

②職業能力証明のツールとして

免許・資格、教育(学習)・訓練歴、職務経験、教育・訓練成果の評価、職場での仕事振りの評価に関する職業能力証明の情報を蓄積し、場面・用途等に応じて情報を抽出・編集し、求職活動の際の応募書類、キャリアコンサルティングの際の資料等として求職活動、職業能力開発の各場面で活用する

職業訓練受講者、在職者、求職者、学生等が職業生活を通じて継続して活用

ジョブ・カード作成による『従業員』のメリット

ジョブ・カードを作成することによって、採用担当者や人事担当者などの『企業側』と『従業員側』の双方にメリットがあります。作成には少なからず時間を要するため、ジョブ・カードを作成することによってどのようなメリットがあるのかは気になるところだと思いますので、まずは『従業員側』のメリットを見ていきましょう。

従業員のメリット①:自分の強みに気付くことができる

ジョブ・カード作成による従業員のメリット①

ジョブ・カードには、履歴書や職務経歴書などの書類をさらに細分化したこれまでのキャリアを記入するため、その過程で自身の「強み」を棚卸することができ、今後のキャリア開発やキャリアプランニングがしやすくなります。
また、転職活動の面接の際に、自身のこれまでの職務経験や具体的なスキルが一目でわかるので、面接にも活かすことができます。

従業員のメリット②:自分の大事にしたい価値観に気付く

ジョブ・カード作成による従業員のメリット②

ジョブカードのキャリアプランシートには、自分が大事にしている『価値観』や『関心を持っていること』『今後やってみたい仕事』などをまとめるため、その過程で「なぜ自分はこの仕事を選んだのだろうか」、「これからどのような働き方がしたいのだろうか」など、まだ自分でも気づいていない価値観に気づく、キャリア形成の手助けとなり、今後のキャリアプランを明確にすることに繋がります。

従業員のメリット③:キャリアプランの実現化

ジョブ・カード作成による従業員のメリット③

ジョブカードを作成しておくと、厚生労働大臣がキャリアアップ支援を目的として指定した講座を受講する際に、最大で費用の7割程度の給付金をもらうことができます。そのため、将来目指す働き方を実現するために必要な知識・スキル学習の際に、とても便利です。

ジョブ・カード作成による『企業』のメリット

次に、ジョブ・カードを作成することによる、採用担当者、人事担当者をはじめとした『企業側』のメリットについても見ていきましょう。

企業のメリット①:採用活動の際のミスマッチ防止

ジョブ・カード作成による企業のメリット①

採用活動の際、応募者が企業の求める人材像とマッチしているかどうかを『履歴書』や『職務経歴書』だけで判断することは非常に難しいといえます。『履歴書』や『職務経歴書』に加えて、実務経験やスキルまで詳しく確認できるジョブ・カードを提出してもらうことで、応募者の能力が把握しやすくなり、採用後のミスマッチの可能性を下げることができます。また、評価制度運用時において、ジョブ・カードを用いて業務評価を行うことで、従業員のキャリア形成支援に活用することも可能です。

企業のメリット②:求職活動支援書の作成に活用できる

ジョブ・カード作成による企業のメリット②

企業が事業主の都合により従業員を解雇しなければならない場合や、高齢などの理由による離職予定者がいる場合には、『求職活動支援者』というものの作成が必要になります。ジョブ・カードには『キャリアプランシート』『職務経歴シート』『職業能力証明』の3つの様式がありますが、その中の『職業能力証明シート(様式3-2、3-3)』に再就職援助措置関係シートを付け加えることで、『求職活動支援書』として活用することが可能です。

企業のメリット③:助成金がもらえる

ジョブ・カード作成による企業のメリット③

従業員のメリット③でもご紹介したように、厚生労働大臣が指定した『特定訓練コース』と『特別育成訓練コース』は助成金対象となっているため、企業はこれを活用することによって従業員の人材育成を行えることに加え、助成金をもらうことができます。こうした企業の取り組みにより、全社的な社内エンゲージメントの向上により、離職率の低下に結びつけることも可能です。

ジョブ・カードの様式の種類

ジョブ・カードは『キャリアプランシート』『職務経歴シート』『職業能力証明シート』の3種類のシートに分かれています。それぞれの特徴について見ていきましょう。

様式1:キャリアプランシート

氏名や生年月日、連絡先などの簡単な情報の他に、

  • 『大事にしたい価値観、興味、関心事』
  • 『強み』
  • 『将来取り組みたい仕事や働き方』
  • 『これから取り組むこと』

等、今後のなりたい自分を記入します。

様式2:職務経歴シート

  • 『所属組織・職名・期間』
  • 『職務内容』
  • 『職務の中で学んだこと、得られた知識・技能』

等、一般的な職務経歴書と比べると、『これまでの職務内容』だけではなく『これまでの職務内容から得られた知識・技能』にフォーカスしたシートとなっています。

様式3:職業能力証明シート

  • 『免許・資格の名称・取得時期』
  • 『免許・資格の内容』
  • 『教育訓練機関名・期間』
  • 『教育訓練内容』

等、『免許・資格シート』には保有している資格を記載し、『学習歴・訓練歴シート』にはこれまで受けた教育訓練等を記載します。

ジョブ・カード作成の流れ

流れ①:キャリアの振り返り

いきなりジョブ・カードを記載するのは難しいと思う方は、まず様々な切り口からこれまでのキャリアを振り返り、整理してみましょう。

流れ②:ジョブ・カードの作成

ステップ1:様式2「職務経歴シート」

今までの職歴を順番に記入してみましょう。

ステップ2:様式3-1「職業能力証明(免許・資格)シート」

これまでの見つけてきた能力を整理するために、取得した免許・資格を記入してみましょう。

ステップ3:様式3-2「職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート

学歴(高等学校、短大、大学、専門学校、職業訓練校等)や、学校卒業後に学んだことを記入しましょう。

ステップ4:様式1-1「キャリア・プランシート」(就業経験がある方用)

これまでの内容を振り返りながら記入してみましょう。また求職中の方は、各様式の中から、応募書類の作成に必要な情報を取り出して編集し職務経歴書などの応募書類を記入してみましょう。

流れ③:さらなる自己理解

ジョブ・カードを書いてみたら、是非、キャリアコンサルティングを受けてみましょう。自己理解が深まり、今後のキャリア形成の課題や目標が明確になることによって、ジョブ・カードの内容がより充実したものとなっていきます。

『ジョブ・カードとは』のまとめ

今回は『ジョブカード』について、そもそもどのようなものなのか、どのようなメリットがあるのか、どのような種類があり、どのように作成するのかについて詳しく解説してまいりました。主な活用場面としては下記のようなタイミングが考えられますが、今後これら以外の場面でも活用の場面は増えていきそうですね!何かご質問や情報ご提供があれば、是非お問合せいただければ幸いです!

主な活用場面
  • キャリアコンサルティングを通じた職務の棚卸し、キャリア・プランの作成
  • 実務経験での職務能力の評価(職場での仕事ぶりの評価)
  • 職業能力形成プログラム以外の教育訓練の成果の記入
  • 能力証明情報を中心とした求職活動時の応募書類の作成
  • 事業主が作成する求職活動支援書について、新ジョブ・カードを活用
  • 職業訓練の際のキャリアコサルティングの成果の記入、職業訓練の評価の記入、助成金の申請など